Vol.2 恵比寿文化祭2022

“街”はどこからどこまで?
~あたまのなかの恵比寿~

November 24th,2022
街はどこからどこまでか...と疑問に思うことは少ないが、いざ考えてみると、はっきり思い描けない。

もちろん、地図上に細かく示される範囲(=行政区分)は存在するが、果たしてそれだけが街なのだろうか。実際は、人々がそれぞれに頭のなかで思い浮かべる「像」があり、それらもひとつの“街”の形なのではないか。

それでは、市井の人々が実際にイメージする恵比寿の範囲は、一体どこまでなのだろう? 人の数だけ恵比寿の範囲があるはず。この記事では、公的に定められた区画とは異なる、ダイナミックな“生きた恵比寿の輪郭”をあぶり出していく。

Vol.2で話を聞いたのは、10月に恵比寿ガーデンプレイスで開催された「恵比寿文化祭 2022」で出会ったみなさん。[CIDER SHACK]に集まる方々に話しを聞いたVol.1と同じように、主要施設の情報のみが掲載された地図を渡し、あたまのなかの恵比寿像の範囲を、実際に線で可視化してもらった。今回インタビューした方は恵比寿との直接的な関わりが深い方が多かったが、果たして、みなさんのあたまのなかにはどのような「恵比寿像」がひそんでいるのだろうか…?

(使用した地図:国土地理院地図を加工して作成)
Text & Edit : Moe Nishiyama          Photo : BAUM LTD.         Edit & Design : BAUM LTD.
Text & Edit : Moe Nishiyama
Photo : BAUM LTD.
Edit & Design : BAUM LTD.

住みやすく、訪れたいスポットもほどよくミックスされている。目的を持たずに歩いても楽しい街。

Case1

会社員・男性

あなたと恵比寿の街の関係について教えてください。

恵比寿に住み始めて、ちょうど今年で2年半ほどになります。元々大阪に住んでいたのですが、転勤することになり、東京で初めて住むことになった街です。今地図で囲んだのは、どこに住んでいる?と聞かれたとしたら、「自分、恵比寿に住んでいます」といえる範囲。代官山駅周辺や目黒区にかかる部分に建てられているマンションも「恵比寿の物件」として売り出されていたりしますよね。中目黒の方面はぎりぎり目黒川あたりまでかなという感じです。自分自身は恵比寿ガーデンプレイス内の[ライフ]をよく利用しているのですが、以前買い物をしているとき、たまたま今回の「恵比寿文化祭」というイベントで出店者を公募しているのを見つけて。良い機会だからと、妻と「恵比寿文化祭」に出店することになりました。

 “恵比寿に住んでいる”と言える範囲が恵比寿では?という仮説に従って引いてくれた線。

恵比寿はあなたにとってどのような街でしょうか?おすすめの場所があれば教えてください。

恵比寿にでは出掛けたいと思うスポットが多いので、休日は街を歩き回ることが多いですね。坂が多いので歩くのにはあまり適さないのかもしれないですが、知っているつもりでも、こんなところにこんなお店がある!と毎回発見があるので面白い。特によく足を運ぶのは代官山と恵比寿の間のエリア。住宅との並びに小さなお店が現れたりして、雑貨屋さんや家具屋さん、カフェや飲食店もバランスよく揃っています。恵比寿といえば、ということでは、ダイワスーパーがはじめたフルーツサンドの名店[ダカフェ]は外せないですね。住みやすいですし、訪れたい場所も程よくミックスされていて飽きない。目的なく歩いても楽しい街だなと思います。

学生時代から今まで、人生の転機を経験してきた恵比寿。範囲は、これまでに歩き回った場所。

Case2

ふふふメーカー・女性

Vol.1とVol.2のCaseのなかで、最も広い範囲の恵比寿を描いてくれた。

今回「恵比寿」として引いてもらった線を地図でみると、広尾から六本木方面まで含めて囲まれていて、とても広いですね。あなたにとって恵比寿はどんな街か、教えてください。

学生時代から社会人として働く今日に至るこの10年、20年、恵比寿では本当にさまざまな経験をしました。恵比寿の街とともに大きくなったという感覚があり、人生の転機をこの街で経験してきたといっても過言ではないかもしれません。今回「恵比寿文化祭」に出店することにしたのも、そんなお世話になった街に恩返しがしたいという思いがあったからです。地図で囲んだのは、私自身がこれまでに歩き回ってきた場所。広範囲ですが、私の中ではいつも中心には恵比寿があって、広尾も六本木も麻布もそこに含まれてしまう感覚があります。

恵比寿で好きなスポットはどこでしょうか?

恵比寿を拠点に活動する中で色々な方と知り合い、人の相談に乗ることも増えたのですが、そのときによく歩くのが目黒川沿いの通りや、白金台のプラチナ通りからガーデンプレイスに抜けていく道。私自身もこれらの明るい道が好きなのですが、相談してくれる方たちと一緒に歩いていると、その方たちも、くよくよしているのが勿体無いと感じて気持ちを切り替えてくれることが多いんです。

結局、自分の人生を決めるのは自分自身。相談に乗るときも、人が少しでも「ふふふ」と笑顔になってくれたら嬉しい。できるだけ普段出会わないような人のお話も聞けたらいいなと思い、「ふふふのふ」という屋号で週末占い師をすることにしました。占いで否定的になることは簡単だけど、こういうこともできたら楽しいんじゃない?と提案できるきっかけの一つになれたら嬉しいなと。今回の「恵比寿文化祭」でも新たな出会いがあり、参加できてよかったですね。

占いに使うツールを片手に、地図の輪郭を描いてくれた。

「いちご畑」で恵比寿から街の緑化に貢献したい

Case3

「ストロベリープロジェクト」出展者・男性

今回引いていただいた線に恵比寿駅が含まれていない点が気になります。活動の拠点が恵比寿の東側なのでしょうか?

恵比寿に住むようになって40年になります。今の恵比寿駅に建て替わる前からこの街を知っていますけれど、当時は今ほど綺麗な場所ではありませんでした。渋谷と目黒に挟まれて、間にある恵比寿はどんなところなのだろうね…?と言われるような。外から訪れる人がそれほど多くない場所だったと思います。それが、ガーデンプレイスができてから街が大きく変わりましたね。いわゆるランドマークとなり、今となっては街のシンボルだと思います。一方、恵比寿駅は、「象徴的な恵比寿」というよりも、どちらかといえば交通の重要な場所として存在しているイメージ。この街に住んでいる、暮らしている、働いている人にとっての恵比寿の中心には入らないのではないかな、というのがわたしが持つイメージです。

恵比寿駅より東側のエリアを、ぐるりと。

「ストロベリープロジェクト」についてですが、東京の街でいちご畑を育てるのは簡単ではないですよね。どのような経緯で始められたのでしょうか?

20年ほど前から屋上緑化活動に携わっていたのですが、徐々に色々な野菜を育てるようになりました。そのなかで、東京都が開発した、東京でも育てることのできる「東京おひさまベリー」といういちごに、3年半ほど前に出会いました。このいちごは無農薬でベランダなどでも育てられるので、都市の緑化に最適なんですね。糖度が非常に高くてジャムを作るのにも最適なので、今は「食育」をテーマに「0.1㎡のいちご畑」として都内の保育園にいちご畑を寄付しています。

恵比寿における、ストロベリープロジェクトの展望はなんでしょうか?

来年の話になりますが、「こどもの日」に向けて、ガーデンプレイスのシャトー広場に大きないちご畑を作れないかなと計画しています。都市緑化は基本的にお金も手間もかかりますが、いちご畑であれば収穫もできてジャムを作ることができるので、収益性のあるビジネスにもなります。私たちのプロジェクトが、少しでも恵比寿の街の緑化に貢献できたら嬉しいですね。


今回お話しをお伺いした方々は、恵比寿ガーデンプレイスで開催された「恵比寿文化祭 2022」で出会った方々。どなたも恵比寿との関係が深く、街にまつわる個人的な思い出やストーリーをたくさん共有してくれた。一方、それぞれが地図に描いた街の輪郭は、恵比寿駅が含まれないもの、印刷した地図いっぱいの大きいものなど、形はさまざま。街での経験・思い出が多いからこそ、そのときの記憶と強く紐づいた、ユニークで唯一無二の「恵比寿像」が出来上がるのかもしれない。行政区分上の恵比寿と範囲は異なるが、それらもまた恵比寿のひとつの姿と捉えることができるのではないか。

[CIDER SHACK]でのインタビューに続く第二弾として、恵比寿文化祭 2022にて実施した取材。今後も恵比寿エリアに限らず様々な場所でインタビューを続けたら、各スポットの人々が描く「輪郭」の傾向が見えてくるかもしれない。今後のリサーチにも、乞うご期待!

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