趣味と恵比寿

ツール・ド・エビス!  E-BIKEで快適に恵比寿のまちをめぐる<後編>

June 25th,2024
新緑の季節、心地よいこの時期、趣味と恵比寿シリーズでは「E-BIKE」にフォーカス。「E-BIKE」は、電動アシスト付き自転車のことですが、街中でゆったりと乗ることを想定されていたママチャリとは異なり、スポーツバイクをベースにしたデザインでスタイリッシュな見た目が特徴です。折りたたみ式などコンパクトなものもあり、乗り心地もパワフル。昨今、都心部でも徐々に自転車レーンが整備されつつあり、電車や車で移動するよりも快適で心地よい移動手段として注目を集めています。 前編では「E-BIKE」でめぐる恵比寿の街をお届けしましたが、後編は「E-BIKE」を中心に整備・修理・販売を行う「L.B GARAGE」の店長・川口さんにインタビューさせていただき、昨今の「E-BIKE」ブームのきっかけをはじめ、自転車の魅力などを伺いました。
Text : Atsumi Mizuno    Photo : Yuka Ikenoya(YUKAI)     Edit & Design : BAUM LTD.
Text : Atsumi Mizuno
Photo : Yuka Ikenoya(YUKAI)
Edit & Design : BAUM LTD.

「自転車のある生活って、よくないですか?」

恵比寿駅からは少し離れて15分ほど歩くと、住宅地の中におしゃれなガラス張りの入り口と自転車がずらっと並ぶ店内が見えてきます。ちょっと隠れ家のような半地下の店内をおそるおそるのぞいてみると、笑顔で出迎えてくれたのは店長の川口典一さん。デザイナーさんにお願いしてつくってもらったというつなぎが、とってもおしゃれでお似合いです。


「L.B. GARAGE」オーナーの川口 典一 さん

川口 こんなアクセスがいいわけでもない場所で自転車屋さんをやるなんて、勇気がいるなと思って、最初は正直後ろ向きだったんです。でも縁あってお願いされたので、「やってみるか…!」と挑戦したのが「L.B. GARAGE」の始まりです。住宅地にあるからこそ、子どもたちが急に飛び込んできたりしておもしろいですよ(笑)」

「L.B. GARAGE」の店内は、子どもたちが思わず入り込みたくなるのもうなずけるような秘密基地のような雰囲気。店内を見渡してみると、バイクと見間違うほどいかつく、メカっぽいデザインの自転車もたくさん並んでおり、普段はあまり見ないようなラインナップにワクワクします。

道路から見ると半地下の店内には自転車がずらっと並んでいます。「のぞいても大丈夫かな…?」とちょっと心配になりますが、店長の川口さんが気さくに出迎えてくれます。

自転車のパーツやライトなどの雑貨も置かれている店内。

店内には自転車のハンドルもいくつか置かれていましたが、「肌に触れる部分のパーツには、こだわるといいですよ」と川口さん。

もともとは、新しいジャンルだからこそ、一般の量販店では扱ってもらえない「E-BIKE」の整備や修理専門店として始まった「L.B. GARAGE」。最近は日本でも、芸能人などの影響で「E-BIKE」の認知度も少しずつ高まり、お客さんの要望に応えるかたちで、整備や修理のみならず「E-BIKE」の販売も徐々に取り扱うようになったといいます。

アクロバティックな技を競い合うBMXの自転車からインスパイアされたデザインの「SODA」。

”ソーダ”という名前のとおり、ボトルオープナーが付いたデザインに遊び心を感じます。

ボトルのキャップを模したマークなど、そこかしこにさりげなくソーダを想起させるデザインがとてもおしゃれ。

自転車が特別好きだったわけではなく、新卒で入社した雑貨やアパレルを扱う会社で自転車の整備などに携わるようになったのが、自転車業界に触れるきっかけだったという川口さん。幅広い内容の仕事を学ばせてもらっていたものの、そのまま続けていくだけではつまらないし、自分にしかできない替えの利かない仕事をしようと転職を決意したとき、頭をよぎったのが自転車整備を学んだこと。そうして飛び込んだのが、自転車業界でした。

そのときに縁があった転職先の自転車店は、自転車を販売するだけではなく、「自転車のある生活」というライフスタイルを提案するお店だったことで、自転車好きの人とはまた違う目線で、自転車のおもしろさに惹かれるようになったと川口さんはいいます。 

川口 好きなことって、自分がこだわりを持っているからこそ、誰かにそれをぶつけちゃうこともありますよね。もともと『自転車が好き』という入り口から入っていない自分だからこそ、お客さんに伝えられる魅力があると思っています。もっとたくさんの人に、自転車を通した生活を楽しんでほしいんです。お店に置いている自転車は、ちゃんと自分たちがこだわったものですが、スペックやカスタマイズを押し付けるわけではなく、お客さんにあったものにぜひ出会ってほしい。日本人のダサい自転車をアップデートしたいですね(笑)。たとえば、デートにママチャリで行くのではなく、洋服と同じように、ファッションの一部として自転車も楽しんでもらいたいです。

転職先の社長の「『自転車もファッションとしてこだわってほしい』という気持ちにとても共感したので、今の自分も大切にしています」と話す川口さん。

「E-BIKE」は、楽でカッコいい

「E-BIKE」は、これまでの自転車とは異なり、アパレルやIT、脚立メーカーなど、想像もつかないような異業種も参入してきているため、一般的な自転車店では忌避されがちなジャンルだそう。ですが、これまでの常識を壊してくれるという点で可能性が詰まっていると、川口さんはおもしろがっているそうです。

川口 「E-BIKE」は、今までとは違う楽しさが確実に味わえる自転車だと思います。ただ乗って移動するだけじゃなく、デザインや機能性を含め、道中の自分自身も楽しめる新しいジャンルと言えるのではないでしょうか。まだ日本の法整備などが追いついていないことで問題として取り上げられてしまうこともありますが、安全面を守って楽しんでいけたらいいなと思っています。タイヤが太いと安定感もあって上り坂も楽ですし、僕は結構好きなんです。一度乗っていただけたら、わかると思います!

満員電車や、駅構内が複雑で上り下りも多くなりがちな東京だからこそ、道中の景色も楽しみながら移動できる「自転車のある生活」がおすすめだと語る川口さん。自転車がもっと街中を走りやすくなるように道路の整備が進んだり、太いタイヤの自転車も停めやすい環境が整っていったら、今よりももっとおもしろくなるのではと力を込めます。

「E-BIKE」の多くは、スポーツタイプの自転車をベースにしているためか、一般的な自転車よりもタイヤが太め。電動アシストも付いているため、走りやすさは抜群です。

川口 ここは恵比寿の端に位置するので、最初は恵比寿って呼んでもいいのかな?と思っていたのですが、最近ご近所繋がりで仲良くさせてもらっている古着屋さんの「TRAVIS」さんと「このストリートを盛り上げたいよね」と話をしていて、この並びには老舗の焼き鳥屋「馬加羅亭」さんもありますし、せっかくご縁をもらったのだから、周囲と協力しながら、自転車業界だけでなくエリア的に盛り上げていけたらいいなと思っています。

映画好きの店長さんがセレクトした商品が並ぶ古着屋さん「TRAVIS」。「L.B. GARAGE」と同じ通りに面しており、おしゃれな映画のポスターが目を惹きます。

自転車業界で何十年と培ってきた知識はもちろん豊富ですが、自転車が好きという気持ちでこの業界に飛び込んでいないからこその軽やかさと柔軟さ、おもしろがる姿勢が根付いている川口さんは、「自転車のある暮らし」に興味をもった人が足を踏み入れるのに、ぴったりの入り口かもしれません。試乗もさせてもらえるので、ぜひ立ち寄ってみてください。

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今回、恵比寿のまちを自転車でめぐり、「L.B. GARAGE」さんに取材をさせてもらうなかで、駅から少し歩いた場所にもたくさんの魅力的なお店や飲食店が点在していることを改めて実感しました。「L.B. GARAGE」さんがある通りには、老舗の名店「馬加羅亭」だけでなくミシュランガイドにも掲載されている鮨屋も発見。少し足を伸ばしてこそ街の奥深さを知ることができる。それが恵比寿というまちの魅力なのかもしれません。

「L.B. GARAGE」

東京都渋谷区恵比寿3丁目14−4 秀恵レジデンス 1階
営業時間:12:00~19:00
定休日:なし
https://www.instagram.com/l.b.garage/

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