オルタナ恵比寿 Vol.1

「食べたもので身体はつくられる」。
健康に特化したコンビニエンスストア
「 WELLER」の決意とは【後編】

February 28th,2023
現状に疑問を抱き、より良くするための活動を行なっている人・場・企業にインタビュー取材をするシリーズ企画「オルタナ恵比寿」。Vol.1に登場いただくのは健康特化型のコンビニエンスストア「WELLER(ウェラー)」。

健康とコンビニエンスストア。一見相容れないように思われる、この二つの要素を組み合わせたハイブリッドなお店が、2022年5月、恵比寿にオープンしました。「WELLER」は、「健康をもっと手軽に」をコンセプトとした、まったく新しい形のコンビニエンスストア。健康≠コンビニという固定概念を覆すかのように、店内には、おいしいだけでなく人々の健康を助けるプラントベース(植物由来)の食品やスイーツのほか、野菜や雑穀をふんだんに使い、調味料にまでこだわった作りたてのお弁当やお惣菜が並んでいます。

前編では、「WELLER」の立ち上げに一から関わってきた、ベンチャー設立などの投資事業を中心に行う株式会社サンブリッジコーポレーション経営企画室/マネージャーの木戸口奈那子さんに、畑違いの食品関連事業に関わった理由や代表のアレン・マイナーさんの想いなどを伺いました。後編では、販売商品の選定基準や店舗運営の具体的なお話や将来的な展望について伺います。
Text & Edit : Atsumi Nakazato          Photo : Madoka Akiyama         Edit & Design : BAUM LTD.
Text & Edit : Atsumi Nakazato
Photo : Madoka Akiyama
Edit & Design : BAUM LTD.

正しい情報をカジュアルな空気に乗せて伝えていきたい

WELLERでは、地下一階のキッチンから届く作りたてのお弁当やお惣菜の提供に力を入れているそうですね。商品の開発の中で、特にこだわっているところを教えてください。

WELLERでつくっている商品の特徴の一つは、雑穀をふんだんに使っているところです。雑穀って普段食べ慣れていない人がほとんどだと思うのですが、実は栄養価がすごく高くて、ご飯に混ぜる以外にもいろいろな使い方ができる万能食材なんです。健康食レストランでも、雑穀を料理にこれほど使っているお店はなかなかないんじゃないかと思います。

もう一つ大事にしているのは、プラントベースの食材を駆使して日本食の良さを体感していただくことです。恵比寿は外国の方がすごく多いのですが、ビーガンの方がいざ日本食を食べようと思っても、お寿司にお魚が使われていたり、うどんやそばに鰹の出汁が入っていたりして食べられないという声をよく耳にします。そこで専属の料理人が雑穀や野菜を使って、ビーガンの方も楽しめるおいしい日本食を追求しています。もちろん調味料にもこだわっていて、店舗で販売している信頼できるものだけを使っています。

もっというと、一般的なコンビニって廃棄の量がすごいんですが、WELLERはキッチンが併設されているので、その日の売れ行きを見ながらつくる量を調整することができています。それが結果的にフードロスにもつながっています。

キッチンを併設することはメリットが大きいですね。では、店舗で販売している商品はどのような基準で選定されているのでしょうか?

WELLERでバイヤーを務めているのは、広尾で自然食品店を20年間運営してきた大ベテランで、商品の選定は彼女の目利きによって行われています。WELLER独自の基準は、プラントベースであることに加えて、無添加であること。使われている原材料がきちんと見えるものだけを選んでいます。最近の自然派食品はビジネスに走ってしまうものも多くて、ビーガンやプラントベースと謳っている商品でも成分表示を見ると、実は添加物がたくさん入っていたりするものが増えています。そんな中で、私たちは自然派食品の大手メーカーのものだけでなく、個人で地道に頑張っていい商品をつくっている生産者の方々からもなるべく仕入れるようにしています。生産者の方々がビジネスを続けていくためにも、仕入れという形で応援していきたいと思っています。

生産者さんとのつながりは、どのようにして見出しているのですか?

自分たちで探すというよりは、生産者さんが自ら売り込みに来てくださるほか、常連のお客様から紹介していただくことも多いですね。私たちはお客様の声を大事にしているので、お客様からおすすめの商品を教えてもらったり、こういうお弁当が食べたいという要望をいただいたりすると、できるだけ柔軟に取り入れるようにしているんです。応援してくださるお客様と一緒につくっているお店とも言えますね。

WELLERで取り扱っているのは、「健康にエビデンスのある商品」だけとのこと。そう聞くと少し堅苦しく感じてしまいますが、実際にお店に来てみると、とてもカジュアルな雰囲気ですね。

健康というと堅苦しくなりがちなのですが、私たちは難しいというイメージを持たれたくないんです。お店でエビデンス云々を説明しても、みなさん引いてしまいますよね(笑)。なので、WELLERに並んでいる商品はどれもおいしくて健康も考えられているんだ、という気軽でカジュアルな方向へ行きたいなと思っていて。

健康って普段はなかなか考える機会が持てず、自分や周りの人が病気になって初めて真剣に考え始めることが多いですよね。これからは、もっと気軽に健康をとらえて、日々の食事に少し気を配ったり、食べるものを変えていったり。WELLERが食事に対する意識を少しずつ変えていくきっかけになれるとうれしいです。

健康に特化したコンビニとして、ほかに心がけていることはありますか?

スタッフのみんなが笑顔で楽しく働けることをすごく大切にしています。心が元気でないとおいしいものをつくれないし、新しい発想も出てきませんよね。お店では笑顔で接客することを絶対条件にしていて、そんな心遣いがカジュアルな雰囲気やお客様とのコミュニケーションにつながっているのだと思います。

健康によりよいものを選ぶことで、ちょっとした幸せを感じてほしい

WELLERを通じて、恵比寿に住む人・訪れる人にどのようなことを体感してほしいですか?

恵比寿を訪れた方々には、WELLERを通じてちょっとした幸せを感じてもらいたいなと思っています。私もこれまでビーガンやプラントベースとは真逆の食生活を送ってきたのですが、いざこういうものを取り入れてみると、すごく小さな幸せを感じやすいんです。たとえば私でいうと、家の調味料をWELLERの商品に変えただけで幸福度が格段にアップしましたし、WELLERのお弁当をしばらく食べ続けたところ、使われている調味料の質の違いに敏感になったり、お肉を食べなくても平気になったり、健康によりいいものをチョイスできていることに対する喜びが大きかったんです。

コロナ禍で心身のバランスを崩された方はたくさんいらっしゃると思いますが、正しい知識を得て、それを自ら選択していくことが幸せにつながるのかなと思っています。

WELLERをきっかけに、お客様の心や身体に変化が生まれたエピソードがあれば教えてください。

WELLERをきっかけに、糖尿病患者の方がプラントベースの食事を実践されたのですが、大幅に数値が改善して、「こんなにすごいことが知られていないのはもったいない」と糖尿病の専門医も言ってくださいました。その変化に驚き、「この食事法を自分の病院で取り入れてみたい」と前向きに検討してくださっています。WELLERを通して、気づきを得て実践してくださる人が一人でも増えることが私たちの願いです。

コンビニとスーパーの間にあるハイブリッドな店舗をめざして

健康に関する正しい情報を届けるために、店舗の運営や情報発信以外に取り組んでいることはありますか?

店舗の運営のかたわら、現場で働く医療従事者の方々との対話の機会を設けて、プラントリシャンプロジェクトが推奨する食事法を知っていただき、取り入れていただけるよう働きかけを行っています。「世の中を変える」と言うと大袈裟かもしれませんが、少しでもこの考え方を広めたいという思いだけですね。カジュアルに店舗を運営する一方で、本質的にどうしたら世の中を動かせるかを考え、一歩ずつ地道に動いています。

WELLERは、この先どのような展開を目指しているのでしょうか?

この半年間、店舗の運営をやってみて、コンビニ業界のすごさを身に染みて感じたんです。やっぱりビジネスモデルや物流の難しさも含めてコンビニの業態を実現することは不可能だなと思っていて。ただ、WELLERを食材中心のスーパーにはしたくないので、これまでのようにコンビニとスーパーの中間にあるようなハイブリッドな店舗を目指していきたいです。何より情報を鵜呑みにせずしっかりと検証することで、「ここのものを購入すれば安心」と思っていただけるようなブランドを確立していきたいですね。また、今後は都心部を中心に店舗数を増やしていきたいという構想もあります。

そして、毎日の食事に気を遣うことで病気を予防する「予防医学」をもっと多くの人に知っていただけるように、手に取りたくなる、気軽に買える商品展開で伝えていきながら、医療従事者の方々に積極的に働きかけることで、少しずつ世の中をよりよい方向に変えていきたいと思っています。

***

健康について難しく考えすぎず、コンビニエンスストアでモノを買う気軽さで手に取ったものが結果的に身体に優しいものであったら、この世界の多くの人がもっと幸せになるはず。

「健康に関する正しい情報を届けることで世の中を変えていきたい」というアレンさんの思いから誕生した「WELLER」は今後、恵比寿の街でどのような存在となっていくのでしょうか。私たちも日々口にするものの大切さをもう一度感じながら、正しい知識をもって笑顔で過ごせるように、学びの必要性を感じる取材となりました。

WELLER 恵比寿店

営業時間:平日 10:00~19:00 / 定休日 日曜日
TEL : 03-6721-7150
東京都渋谷区恵比寿1-15-4 メゾン115
JR「恵比寿」駅 東口より徒歩2分
東京メトロ日比谷線「恵比寿」駅 1番出口より徒歩4分

「食べたもので身体はつくられる」。

健康特化型コンビニ「WELLER」の決意とは【前編】はこちら

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