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恵比寿をつくる、街の人の趣味や仕事や生活 〜恵比寿文化祭2022〜【前編】

October 5th,2022
来る10月8日(土)・9日(日)の二日間、「恵比寿文化祭 2022」が開催されます。
恵比寿文化祭は、普段はなかなか出会うことのない恵比寿の街の人たちが集まり、街の魅力やカルチャーを賑やかに発信したいという当初の想いから、2011年にスタートしました。12回目となる今年は、いっそう街にひらかれたイベントになるよう、より多様なジャンルの参加者たちが集まります。

開催に先立って、ジャンルも規模もさまざまな一部の参加企業・組織が集まり、恵比寿文化祭にかける思いや当日の見どころ、そして恵比寿の街とのこれまでのかかわりと魅力について語り合っていただきました。ある街に住む・働く人々が一体どのようなことをしているのかは、普段なかなか知ることはできません。この記事を通して、多様な個性が一堂に会する恵比寿文化祭の場の雰囲気を感じていただくだけでなく、ぜひ新しいジャンルや恵比寿の街の姿の発見にも繋げてみてください。


<プロフィール>

NPO法人ぱれっと(参加歴 2013~)
1983年から恵比寿で活動する団体。就労・暮らし・余暇などの生活場面において障がいのある人たちが直面する問題の解決を通して、すべての人々が 当たり前に暮らせる社会の実現に寄与することを目指している。
・南山達郎 事務局長
・武井琴美 余暇活動支援事業「たまり場ぱれっと」職員

株式会社リビタ (参加歴 2020~)
恵比寿に本社を置く、リノベーションで暮らしとコミュニティをデザインする集団。「住む」「働く」「遊ぶ」「学ぶ」「旅する」をテーマに、住宅・ホテル・ワークラウンジ・街のシェアスペースなど、さまざまな家づくり・場づくりを手掛ける。
・大嶋亮 経営戦略部 グループリーダー
・平塚万里奈 経営戦略部

株式会社MISA(参加歴 初めて)
2019年に子育て中のママ3人で創業。恵比寿を拠点にベビー・キッズを中心とした衣料品・雑貨のオリジナルブランドを展開し、EC販売事業を行う。顧客との共創型による商品開発を強みとし、企画したオリジナル商品の販売実績は単品1万着を越えるなど、ママ層を中心に高い人気を誇る。
・上村紗也賀 代表取締役
Text & Edit : Atsumi Nakazato       Edit & Design : BAUM LTD.
Text & Edit : Atsumi Nakazato
Edit & Design : BAUM LTD.

街のみんなでつくる文化祭へ

まず、皆さんの会社・組織の活動内容について教えてください。

大嶋 株式会社リビタは、生活者視点で暮らしや環境を豊かにするために、リノベーションとコミュニティマネジメントの手法を用いて不動産事業を展開しています。リノベーション住宅の販売をメインとしながら、シェアハウスやシェアオフィス、ライフスタイルホテルの運営も行っています。

南山 NPO法人ぱれっとは、知的障がいのある人たちが地域の中で当たり前に生活していくために、さまざまな事業を行っています。余暇活動を支援する「たまり場ぱれっと」からスタートし、クッキーを作って販売する「おかし屋ぱれっと」、メンバーの個性やアイデアを活かしてオリジナル商品を作る「工房ぱれっと」、さらに共同生活を行うグループホームやシェアハウスなども運営しています。障がいがある人とない人がともに遊び、働き、暮らしをつくることをテーマに、恵比寿の街に根付いた活動を行い、来年で40周年を迎えます。

月に一度開催される、「たまり場ぱれっと」の解放日の様子

上村 株式会社MISAは、2019年に恵比寿在住の3人のママが集まって創業した小さな会社で、海外の子ども服やおもちゃを中心に取り扱うECショップを運営しています。単なる服屋ではなく、ママたちを集めて座談会をしたり、インスタライブで育児の悩みを一緒に解決したりと、コミュニティ事業に力を入れているところが特徴です。コロナ禍もあり、横のつながりをつくりにくい状況にある中で、恵比寿に住んでいるママたちがつながるきっかけになれるような、地域に根付いたショップになりたいと思っています。

ぱれっとさんとリビタさんは、これまでも継続的に恵比寿文化祭に参加されています。いつどのようなきっかけで参加されることになったのですか?

大嶋 2017年にオフィスを渋谷から恵比寿に移転してから、当時恵比寿文化祭のコーディネートをされていたシブヤ大学学長の左京泰明さんをお招きして社内で勉強会を行ったことがあったんです。それをきっかけとして、翌年2018年に恵比寿文化祭の一部お手伝いをさせていただきました。当社は、展開している不動産でコミュニティを大事にしており、私たち社員もそういったマインドを持っているので、自分たちが働く街のコミュニティにも関わっていきたいよね、という話は前々からあって。恵比寿文化祭に出店できるといいなと思っていたところに、実行委員の方々からお誘いを受けて、2020年から参加するようになりました。

南山 恵比寿文化祭がスタートした2011年秋頃に、恵比寿文化祭の告知ポスターが街なかに貼られているのを見て、これは何だろうと気になっていました。当時、恵比寿はコミュニティが今ほど盛り上がっていなくて、地域で活動する人たちが少しずつつながり始めているような状況でした。それから2年後の2013年に、私たちも元々つながりのあった実行委員の方から声をかけてもらったことから、ダンスや物販などで継続的に参加しています。

MISAさんは今回が初参加ですね。参加しようと思われた経緯をお聞かせください。

上村 コロナがだいぶ落ち着いてきたこともあって、オンラインだけでなく、そろそろオフラインでも地域のママたちに出会える機会を設けたいなと考えていました。そこで、地元の恵比寿で出店できるイベントを探していたところ、恵比寿文化祭の情報を見つけて、すぐに応募しました。これまで恵比寿文化祭でいろんな会社が出店されているのを見て、「いつかこんなところでできたら良いよね」とスタッフ同士で話していたんです。今回ようやく念願が叶ったので、当日をすごく楽しみにしています。

恵比寿文化祭の当日は、どのような企画・出店を予定されていますか?

平塚 リノベーション工事で余ったタイルや壁紙などの建材を、コースターやブックカバーといった生活雑貨、アクセサリー、アート作品へとアップサイクルするワークショップを行います。捨てられてしまうはずのものを再活用する楽しさを多くのみなさんに体験していただきたいと思っています。リビタのオフィスをひらく形で実施するので、恵比寿の街を回遊するきっかけになることも期待しています。

武井 ぱれっとでは、運営する「たまり場ぱれっと」の活動から生まれたヒップホップ・ダンスチーム「サンシャインダンス」によるパフォーマンスを披露します。出演するメンバーは、ダンス経験の浅い高校生からベテランの社会人までさまざま。恵比寿文化祭に向けて、障がいのある人ない人も一緒に、プロの先生に教わりながら練習を重ねてきました。

南山 このダンス教室は20年以上続いているのですが、特にここ数年はレベルが上がっていまして、かなり複雑なステップもこなせるようになってきました。当日の演出には、決まった振り付けだけでなく、メンバーが交代で自分の表現で踊るフリーの時間があって、それがすごくかっこいいので、ぜひ注目していただきたいです。「サンシャインダンス」は毎年観客の方々からご好評いただき、楽しみにしていただいている方も多いという話しも耳にしまして、すごく励みになりました。

上村 MISAでは、普段はECサイトでしか買えない、私たちがセレクトした海外の洋服やママたちと一緒に開発した離乳食の食器類を展示・販売します。それだけでなく、子どもたちにお祭りを体験させてあげたいという思いから、子どもたちが大好きな宝石すくいを準備する予定です。子どもたちが遊んでいる間に、お母さんたちがゆっくり子ども服を見たり、ママ同士が交流できる時間をつくれたらいいなと思っています。

歴史ある恵比寿の街。恵比寿の多様な側面を発信したい

会社・組織として、恵比寿文化祭に参加する意義をどのように捉えていますか?

平塚 リビタは恵比寿にある会社として、街との関わりを深めていきたいという思いがあって、恵比寿文化祭を恵比寿の街に溶け込むための一つの大きな入り口と捉えています。恵比寿文化祭に集まる地域の方とのつながりをつくる機会として、とてもありがたいです。

上村 私たちもリビタさんと同じく、恵比寿の街に溶け込み、地域のファミリーとともに成長したいと思っています。恵比寿の子どもたちにとって、“地域の服屋さん”という立ち位置になれたらと思っているので、今回の出店によって、より多くの地域のみなさんに私たちのことを知っていただきたいと思っています。今は店舗を持っていないのですが、いつかは恵比寿に子どもも大人も楽しめる大きな店舗をつくりたいので、その最初の一歩を踏み出すきっかけになることを期待しています。

南山 障がいのある人は、サポートを受ける側というイメージで語られがちですが、彼らも社会を構成する一員であり、何らかの方法で自分を表現し、社会の役に立つ機会を得ることが重要だと思っています。「ありがとう」といってもらえる立場になることは、生きがいややりがいにつながりますし、ダンスを楽しみにしてくれる人がいることは、とてつもなく大きなモチベーションになるわけです。私たちは、そうした地域とのつながりを感じられる瞬間を一つでも多くつくりたいと思っていて、恵比寿文化祭をその機会を得られる大事な場だと捉えています。実際に、ダンスチームのみなさんは、毎年恵比寿文化祭のステージに立つことをすごく楽しみにしています。

12回目となる今回の恵比寿文化祭では、これまで以上に多様な規模やジャンルで活動する街の人たちが集まり、恵比寿の新たな側面が見える文化祭にしていこうと準備が進められています。いっそう街にひらかれた場となっていく恵比寿文化祭で、いつかこんなことをしてみたい、こんな機会があったらおもしろそうだなと思うアイデアはありますか?

平塚 恵比寿文化祭では、2019年頃から恵比寿ガーデンプレイスだけでなく、私たちのように企業のオフィスや、地域で活動する方々の拠点も会場として利用するようになり、イベントが恵比寿の街全体に広がってきましたよね。それにあわせて、恵比寿全体を知る機会として「恵比寿の街歩きツアー」があれば、私自身もぜひ参加してみたいです。恵比寿の歴史を紐解くような街のスポットを巡ったり、恵比寿をよく知る地元の方々におすすめのお店を教えてもらったりしながら、ディープな恵比寿を知ることができるとうれしいですね。

南山 街にひらくイベントとして、恵比寿の街全体で“同時多発的”に何かが起こるとおもしろそうですよね。恵比寿は歴史が古い街で、新旧の顔があって、今多くの人がイメージとして持っている「おしゃれな恵比寿」はこの20年くらいで新たにできてきた側面だと感じています。その一方で、恵比寿の名物である駅前盆踊りが70年近く続いていたり、地元には町会や商店街、PTAなど地域のために活動されている方々がたくさんいます。

そう考えると、恵比寿文化祭の期間を一週間ほどとって、その間に集中的に恵比寿に関わるあらゆる人たちが何かを発表したり、出店したりできると、街全体がすごく盛り上がるなと思うんです。考えるだけでワクワクしますね。

上村 南山さんがおっしゃったように、恵比寿文化祭の期間を一週間設けて、そのうちの1日をファミリーに特化した企画を盛り込んだ日にできるとおもしろいなと思いました。その日は、子どもが遊べるコンテンツが街の至るところにあったり、いつもは子連れで入れないような小洒落たレストランが、特別に子連れのファミリーも歓迎してくれたり。ファミリーが思う存分楽しめるようなイベントができるといいですね。

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規模も活動内容も異なる3つの企業と組織のみなさんに、普段の活動内容や恵比寿文化祭への期待を語っていただきました。恵比寿文化祭の出展内容は、それぞれの組織の個性と特長が生かされており、多岐にわたります。一方で、自分たちを街にひらこうとされている部分が共通点として見えてきました。後編では恵比寿文化祭から街に焦点を移し、街に対する個人的な記憶や期待に踏み込んでいきます。それぞれの街とのかかわり、そして、それらから見えてくる恵比寿の多様な姿を覗いてみてください。

恵比寿をつくる、街の人の趣味や仕事や生活【後編】へ

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