恵比寿Thinking Cap #3

新醸造所を拠点に、
街と人とビールの接点を育む【後編】

April 28th,2023
2023年末に「恵比寿ガーデンプレイス」内で開業予定の「YEBISU BREWERY TOKYO」。もともとヱビスビール記念館として親しまれていた場がリニューアルされ、醸造所を併設したヱビスのブランドを体験できる拠点として生まれ変わります。

ヱビスビール発祥の地である恵比寿で、訪れた人がその場で生まれたオリジナルヱビスを楽しみながら、ヱビスブランドならではの個性と歴史、物語に触れる“リアル体験”をつくりあげる企画が進められています。

1890年、日本麦酒醸造会社(現、サッポロビール株式会社)が、ヱビスビールのルーツである「恵比寿ビール」の製造・販売を開始し、やがて街や駅の名前の由来になるほど、地域に親しまれるようになったヱビス。その後、1988年の工場の移転に伴い、恵比寿の地における約100年におよぶビール製造が幕を下ろしてから35年を経た今年、恵比寿の地に再び「YEBISU BREWERY TOKYO」としてビール醸造が再開されることは、ヱビスビールにとっても、恵比寿という街や人にとっても、大きな意義のあることとなりそうです。

今回は、「YEBISU BREWERY TOKYO」の開業に先立って、ヱビスのブランドとしての思いとともに、ヱビスと街と人の三者をつなぐデジタルとリアル双方を活用したさまざまな取り組みの展望やヱビスと街との関わりについて、サッポロビール株式会社ブランドマーケティング担当の沖井尊子さんと、同社の商品開発担当の有友亮太さんにお話を伺いました。

<プロフィール>

サッポロビール株式会社
沖井尊子
マーケティング本部 ビール&RTD事業部 ヱビスブランドグループ ブランドマネージャー

サッポロビール株式会社
有友亮太
マーケティング本部 ビール&RTD事業部 ヱビスブランドグループ Chief Experience Brewer

Text & Edit : Atsumi Nakazato          Photo : Yuka Ikenoya(YUKAI)          Edit & Design : BAUM LTD. 
Text & Edit : Atsumi Nakazato
Photo : Yuka Ikenoya(YUKAI)
Edit & Design : BAUM LTD.

デジタルとリアルが交差し、人と街とブランドの接点を育む

もともと恵比寿という街と縁の深いヱビスビールですが、最近では、デジタルとリアルの双方を駆使して、街と人とヱビスの接点を生み出すためのさまざまな新しい取り組みに挑戦しているとお聞きしています。

沖井 私たちとしてはやはり、恵比寿の街に来たらヱビスのことも思い出していただきたいと思っていますし、 街の発展にヱビスが貢献していけるようになれたらと考えています。そこで新たにできたのが、「TAPS BY YEBISU」、「YEBISU BAR STAND」です。

「TAPS BY YEBISU」は、「立ち寄ると、恵比寿とヱビスがもっと楽しくなるビアスタンド」をコンセプトに、JR東日本クロスステーションさんと協働し、恵比寿の駅中につくった店舗です。街を訪れる人を受け入れる玄関として、ヱビスビールを楽しんでもらうのはもちろん、街の情報にもたくさん触れ、恵比寿の街にもっと出かけたいと思ってもらえる場所になっていくことを目指しています。

そのために、たとえば「街の逸品」というメニューを置いて、恵比寿の飲食店に創作していただいたオリジナルポテトサラダをヱビスビールと一緒にご提供し楽しんでいただくことで、恵比寿の街にあるお店を知り、「TAPS BY YEBISU」を訪れた方に、今度は街中のお店に足を運んでもらうきっかけづくりに取り組んでいます。

2022年から恵比寿駅東口に「ヱビスビール口」のサインが掲げられている。

「YEBISU BAR STAND」は、恵比寿駅から歩いてくると見える恵比寿ガーデンプレイスの入口にあります。今後は、ガーデンプレイス内に「YEBISU BREWERY TOKYO」もできるということで、恵比寿という街全体でヱビスビールのブランドを体験していただけるような流れをつくっていきたいですし、街のみなさんと一緒に恵比寿を盛り上げていく動きをこれから生み出していきたいと考えています。この店舗は他のYEBISU BARと比較すると広さはありませんが、ちょっと立ち寄ってヱビスを楽しんで頂けるような場所でして、現在も沢山のお客様にお楽しみいただいています。

2022年には「YEBISU BEER TOWN」という会員制参加型コミュニティサイトを立ち上げました。こちらはヱビスに特化した会員制のSNSであり、デジタルの場なので、恵比寿という街に限定せず、世界中のお客様とコミュニケーションを取ることができます。ここでは、私たちからの一方的な情報発信だけでなく、お客様同士の横のつながりも育むコミュニティーとして、ビールの楽しみ方がどんどんブーストされていくような場づくりを目指しています。たとえば「YEBISU BEER TOWN」内には、お客様の集まりによる実行委員会があり、どういうことを仕掛けるともっと楽しいか、どんなことをやりたいかということを考えながら、お客様同士で盛り上がりをつくっていくという仕組みがあります。

会員の方の活動の仕方もさまざまあり、自分でヱビスに関するいろんな情報を積極的に書き込んで発信してくださる方もいれば、とにかくイイねをいっぱいつけて楽しんでくださる方もいらっしゃいます。ヱビスという好きなものが共通しているからこそ盛り上がっている様子が見えて、今後はぜひオフ会のようなリアルの交流も育みたいと考えています。

奥深いビールの味わいが、豊かな時間をつくっていく

話は変わりますが、お客様に限らずお二人もビールがとてもお好きかと思うのですが、お二人が考えるビールの魅力や好きなところ、おすすめの楽しみ方をぜひお聞かせください。

沖井 簡単な質問のようで、とても深いですね(笑)

有友 そうですね(笑)

私は、ビールは紀元前から作られているのが魅力のひとつだと思います。それでいて今なお世界中で作られている飲み物であり、、ビールをきっかけにどんな国の人とでも話ができるし、コミュニケーションを取りやすいところが大きな魅力だと感じています。歴史が長いからこそ裾野が広がっていると思いますし、どの文化圏でもある飲み物というのは、話題として強いですよね。

沖井 私は、どうしてビール会社に就職しようと思ったのかを振り返った時に、ビールって割とみんなが最初に頼むものであり、かつ人を笑顔にしますよね。ビールがあることですごく幸せな時間が流れるし、そこが大きな魅力だと思っています。しかもビールのことを勉強すると、まだまだ深くて広くて歴史も長く、知れば知るほど楽しくなっていくんです。今まで入社前に知っていたことなんて、本当にちっぽけなものだったと痛感するのですが、そういう深みのあるところも大好きです。

沖井 あと、ビールの楽しみ方としては、個人的にはスイーツとの組み合わせが意外といけるなと思っていまして。特に黒ビールは、コーヒー感覚でいけるなと思っていて、香ばしい味わいがチョコレートのような甘いものと合うんです!過去に、YEBISU BARの人たちとなにがビールと一番マリアージュするのか色々試してみたことがあったのですが、 黒蜜をかけたバニラアイスと黒ビールがとっても美味しかったんです。

有友 黒ビールにスイーツは、すごく合いますよね。黒ビールは、もっと流行ってほしいです! 昔ドイツでは、戦後にコーヒーが手に入らなかったとき、黒ビールにも使用される焙煎した大麦にお湯を注ぎコーヒーの代わりに飲んでいたこともあったそうです。今では、ちょっと温めた黒ビールにシナモンを加えたスイーツっぽいビールもあったりしますし、そういったまだ知られていないビールの楽しみ方を伝えていきたいし、体験していただける場をつくっていきたいですね。

ビールとスイーツの組み合わせは考えたことがありませんでしたが、想像してみたらとてもおいしそうだなと思いました! 今回のインタビューを通して、ビールの奥深さや面白さに触れられた気がします。最後に、恵比寿という街の魅力についてもお二人のご意見をお聞かせください。

沖井 恵比寿の街歩きは楽しいですね。「路地裏にこんなお店があったんだ」とか、「ここ家具屋さんだったんだ」という発見があって楽しいです。近代的なビルがあると思ったら、昭和何年に建ったんだろう? と思うようなレトロな建物があったり、下町感のある古いアパートがあったり。二面性みたいなものがあって、共存している感じが面白いです。

有友 そうですね、洗練された街かと思いきやちょっと道を入ると下町っぽさが残っていて、いろんな顔がある街だなと思いますし、そういうところにいいお店が多かったりするんですよね。 路地裏のお店に行くのも面白いですし、僕は植物が好きなので散歩するのにも気持ちいいです。一方で、ドラマ『花より男子』に出てくる近代的なモニュメントがあったり、新旧入り混じっている魅力がありますね。

沖井 私は、休日もよく恵比寿に来るんです。本当に街が好きで、大きさがちょうどいいなと思っていて。おいしいお店もお買い物するところもたくさんあって、 アートに触れる時間が過ごせる場所もあれば、 下町っぽいほっとするような場所もある。なんでも全部このエリアの中にあるんですよね。なので、最近引っ越してちょっと遠くなったのですが、休日になるとなんとなく恵比寿に来てフラフラしています(笑)。

ヱビスは今でも十分味わい深い街ですが、ブルワリーができることで、恵比寿の街、恵比寿ガーデンプレイス、ヱビスブランドの三位一体で、お互いのイメージを良い方向に引っ張っていけるようにとグループ内でも話し合っていて、ヱビスも貢献していきたいですし、街で過ごす時間がヱビスというビールにもいい影響を与えてくれるのではないかと信じています。

1889年創業当時の醸造所。「YEBISU BREWERY TOKYO」はこの跡地に誕生する。

***

恵比寿の街の変化とともにあったといっても過言ではないヱビスビール。ヱビスビールが生まれたこの土地に「YEBISU BREWERY TOKYO」ができることで、恵比寿に新たな歴史が刻まれていきそうな予感がします。その場で出来立てのビールが味わえる「YEBISU BREWERY TOKYO」が、恵比寿の街でどんな場になっていくのか楽しみです。

「YEBISU BREWERY TOKYO」

住所:東京都渋谷区恵比寿4-20-1 恵比寿ガーデンプレイス内(現:ヱビスビール記念館)

※ヱビスビール記念館は2022年10月末から休館中。

開業:2023年末予定

新醸造所を拠点に、 街と人とビールの接点を育む【前編】はこちら

Profile
沖井尊子
サッポロビール株式会社
マーケティング本部
ビール&RTD事業部 ヱビスブランドグループ
ブランドマネージャー
有友亮太
サッポロビール株式会社
マーケティング本部
ビール&RTD事業部 ヱビスブランドグループ
Chief Experience Brewer
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